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2025/01/22
飲食店などの経営をするためテナントの賃貸契約をする際、新しい借主にとってお得と言われるのが「造作譲渡」です。
造作譲渡とはテナントに配置されているものをそのまま譲り受けることで、そのような状態の物件は一般的に「居抜き物件」と呼ばれています。
造作譲渡ができることのメリットは、新しい借主だけでなく譲る側の現借主にも大きいです。
しかし、居抜き物件として取引できないケースは珍しくなく、現借主と新借主はどちらも余計な費用を払わなければならないことも…。
必ずしも造作譲渡ができない理由は、テナントの所有者である「家主」が大きく関わってきます。
造作譲渡をスムーズにおこなうためには、賃貸借契約やテナント運営にかかわる「家主」「造作譲渡を受ける買主」「造作譲渡をする売主」の3者の関係性をおさえておくと良いでしょう。
この記事では、造作譲渡にあたり「家主」「買主」「売主」の3者それぞれが受けるメリット・デメリットをご紹介します。
目次
飲食店などを経営するためのテナント物件は基本的に、貸主と借主のあいだに「賃貸借契約」を結びます。
賃貸借契約を結ぶ際のテナント物件の状態は、おもに下記の2パターンです。
・スケルトン物件:壁や装飾、家具などがすべて撤去された柱剥き出し状態
・居抜き物件:テナントが店舗経営をしていたときのまま退去だけした状態
つまり、「スケルトン物件」はコンクリート打ちっぱなしの空っぽの状態なので、そのまま経営を始めることができず、内装工事が必須になります。
一方で「居抜き物件」は、はやければ店舗の明け渡しをされた日からすぐに開店ができる状態です。
居抜き物件に残った壁や装飾、家具、厨房機器などを「造作物(ぞうさくぶつ)」と呼びます。
そして、居抜き物件の取引にあたり造作物の譲渡がおこなわれることを「造作譲渡」と呼び、造作譲渡をおこなえる物件を一般的には「居抜き物件」と言うことが多いです。
スケルトン物件の場合、コンクリートの素材が剥き出しになっていたり、骨組みだけの状態になっていたりと、物件として機能しない状態になっています。
天井や壁などの内装のほか、配管や配線もされておらず、当然トイレや厨房などの設備もありません。
一方で造作譲渡をおこなえる居抜き物件では、経営していた店舗の状態をそのまま受け継ぐことができるので、比較的すぐに利益を出し始めることができます。
造作譲渡をおこなう場合、造作物の所有者であるテナントオーナーと、造作物を譲り受けたいテナントオーナーのあいだで「造作譲渡契約」を結びます。
場合によっては家主が造作物の所有者になることもありますが、その場合にも「造作譲渡契約」と「賃貸借契約」は別のものとして交わされるものです。
・賃貸借契約:テナント物件の賃貸をするうえでの決まり事を交わす契約
・造作譲渡契約:テナント物件に付帯する造作物を譲渡するために交わす契約
問題になるのは、テナント物件の賃借人である現テナントオーナーと、テナントの造作物を譲り受けたい新テナントオーナーの間で勝手に「造作譲渡契約」が交わされた場合です。
造作譲渡契約後に家主が新テナントオーナーを認めず、新テナントオーナーとの間に賃貸借契約が結ばれなかった場合、新テナントオーナーはテナントを利用できません。
そこでおさえておきたいのが、造作譲渡契約を交わされることによる、家主にとってのデメリットです。
「家主」にとってのメリット、デメリットについてご紹介します。
家主はテナントを利用したい経営者と賃貸借契約を結び、テナントを貸す立場です。
基本的に賃貸借契約を結ぶと、「原状回復」としてテナントにスケルトン工事をしてから家主に返す、という条件が内容に含まれている傾向があります。
つまりテナントの借主は、造作譲渡が自由にできるというわけではありません。
この理由を、家主目線でのメリットとデメリットを通してご紹介します。
家主にとって造作譲渡により受けられるもっとも大きなメリットは、テナントの借主がスムーズに見つかりやすことでしょう。
賃貸借契約の契約期間が満期になってテナントが退去する、というケースのほかに、赤字や経営不振で予期せぬ解約が起こる、というケースもあります。
造作譲渡を了承することで借主が自分で譲渡先を探してくれば、スムーズにテナントの明け渡しが完了し、そのまま新テナントから賃料を受け取り続けられることも。
賃料が途切れる期間がなくなる可能性が高く、自分でテナントの新規賃借人を探す手間がかからなくなるというのは大きなメリットです。
家主にとってのデメリットは、テナントの不備に気付けない点です。
テナントをそのまま新テナント賃借人が利用した場合、隠れていた不備・不良によってトラブルが発生しやすくなります。
スケルトン状態の物件であれば、新テナント賃借人がゼロからテナントの内装を作り、自分で設備を整えるため、家主に文句が出ることはほとんどありません。
一方で造作譲渡の場合、新賃借人に家主が責任を追及される、というケースがあり、家主が造作譲渡を毛嫌いする大きな原因でもあります。
売主にとってのメリットとデメリットもご紹介します。
とはいえ基本的に、売主にとってはメリットしかありません。
売主にとってのメリットは、スケルトン工事費用を浮かせられるうえで、造作譲渡による黒字が上がりうることでしょう。
スケルトン工事が必要な場合、小さいテナントであっても数十万円〜数百万円の工事費用がかかります。
一方で造作譲渡をする場合、工事費用を丸々浮かせることができる一方で、造作譲渡をすることにより新テナントオーナーから譲渡にあたる費用を受け取ることができます。
造作物の価格設定は、新テナントにとって価値があるほど高くなるので、立地や賃料条件、内装状態によって査定を行います。
売主にとって、造作譲渡にはメリットしかありません。
しかし気になる点としては、家主が認めなければ造作譲渡ができないことです。
造作譲渡にあたり正しいステップを踏み、認めてもらうことが大切になります。
造作物の買主にとってのメリットもご紹介します。
買主にとっても、基本的にはメリットしかないですが、物件の質や相性は見極める必要があるでしょう。
テナントを探すとき、テナントオーナーは基本的に「居抜き物件」を選んだほうが、開店コストがかからないことがほとんどです。
スケルトン物件を借りる場合、ゼロから工事をして理想的な内装を作っていく必要があります。
厨房器具はもちろんトイレなど、必要なものはすべて自分で用意します。
一方で造作譲渡であれば、開店に必要なものがだいたい揃った状態で、すぐに開店できるのがメリットです。
買主は、自分の経営したいテナントのスタイルと、造作譲渡を考えているテナントに備わっている設備をしっかりと比較して、購入する価値があるかを検討すべきでしょう。
自分のお店にとってプラスとなる要素が少ない場合、結果として撤去にお金がかかったり、買い増しにお金がかかったりと、費用がかさむ可能性もあります。
造作譲渡は、家主の許可がなければおこなえません。
いくら買主と売主にメリットが大きくても、家主さんによっては断固として理解を示さないことがあり、スケルトン工事が必須になるパターンもあります。
むやみに家主に相談するのは危険で、不動産会社もうまく取り持ってくれないことがほとんどです。
居抜き物件の造作譲渡なら、わたしたちプロが適切なアドバイスやご対応をさせていただきます。
お気軽にご相談ください。